国立西洋美術館で行われているコルビュジェの展示会に先日行ってきました。土曜日ということもあり、館内は結構な賑わいでした。国立西洋美術館が世界遺産に登録されてから外国の方の来館者も多くなっている印象でした。
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1階は写真撮影も可能で模型が中心に展示されています。オメザンファンのアトリエ・住宅の模型など30年以上も前に作られた模型は精度もすごくきれいなまま保存されているなとその技術に驚きました。おそらく、当時はレーザーカッターも今ほど普及はしておらず精度も今ほどは良くないだろうしただただ凄いと思う。
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いろんな展示がある中で一番気になったのは、壁面に写されていたヴォワザン計画の3DCG映像、神戸大学の学生の方が作成されたらしく今までにない展示だったと思う。これまで図面や模型という媒体を通して伝えることはあったが、3DCGの映像はとても新鮮で何より分かりやすい。視線に入りずらい部分にあり、見逃している人も多いのがもったいないなと思いました。
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2階に上がるとこの展示会のメインとなる絵画と建築をテーマに展示がされています。コルビュジェが建築家として脚光を浴びる前、本名のジャンヌレとして活動していた時の絵画作品が展示されています。ジャンヌレとともに<ピュリスム>という流派を引っ張っていたジャンヌレの師であるアメデ・オザンファンの絵画が対比的に飾られている。ギターや瓶などの静物に出てくる有機的な曲線はのちのコルビュジェの作品にも取り入れられてます。<ピュリスム>は幾何学的な規則に基づく構築的な絵画を追求したもので、他の画家も巻き込んだ流派になっています。ファングリスというピュリスムの原点のモデルとなった画家から手法を取り入れたオザンファンの「和音」という作品がピュリスムをよく表していると思いました。輪郭線の結合というテーマをもとに、多くの日常品を配置した作品です。
ジャンヌレとオザンファンによりピュリスムは頂点を迎えるが、その後ジャンヌレが従弟のピエールと協働し、建築家・コルビュジェとして活動し始めるとオザンファンとの間に亀裂が生じてしまい、それまで、エスプリ・ヌーボーの編集に携わっていたことから手を引き<ピュリスム>という一つの運動は終焉を迎えてしまいます。コルビュジェと<ピュリスム>という流派の関係性の変化によって、コルビュジェの建築は対応していることがよく伝わる展覧会でした。
コルビュジェの絵画は、風景や人物画が介入してくるようになり、有機物のような生命感が現れてくるような変化が起きます。絵画におけるテーマが幾何学的な秩序から人間と自然との調和に移るにつれ、コルビュジェがつくる建築もそれに伴って変わります。
建築と絵画を結び付けて、それぞれの変化がどういう因果を持っているかが分かる新しい切り口の展示会でとても興味深かったです。
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