魚谷繁礼展 「都市を編む」TOTOギャラリー・間

京都を中心に活動されている魚谷繁礼さんの展示。京都の町家の建築・街区の数多くのリサーチ、また、その緻密なリサーチを元にした多くの建築の展示が展開されている。魚谷さんの話にもあったが、リサーチは必ず建築に結びつくわけではない。しかし、長い間の時間を積み重ねて成り立っている京都の町並みを読み解き、その町並みを構成するコンテクストを把握することの重要性を感じられた。過去から現在までの流れを捉え、現在から未来に向かって、京都の町に対してどのような応答が可能か。また、これまでの建築を単に保存するのではなく、現在の技術をもって再解釈し、無理に過去に囚われすぎない姿勢もとても共感できた。歴史との距離のとり方が過剰すぎないのは、あくまでこれからの未来を作る未来志向であるからなのだと思う。

京都の町に敷かれている条坊制のグリッド状の都市計画は、今もなお都市の骨格をなしている。うなぎの寝床と呼ばれる短冊状の敷地形状は、今もなお京都の町に多く展開されている。一見、どの場所にいても均質そうに見えるグリッドであるが、よくよく見ると、多種多様な路地空間が張り巡らされていたりする。また、展示されている2002年と2022年を比べ、様々な切り口から切り取られたマップ見ると、町を構成する要素はどんどんと姿を変えており、街区自体でさえも変化していることに気付かされる。「京都」という歴史のある都市であり、古くからの寺社仏閣が保存されている都市であるからこそ、「変化」が少ないように思えるが、町の中では他の都市と同じ様に時代の流れに乗っているようであった。

中庭に展示されている町家は、なにか特殊な建物でも、保存すべき素晴らしい建物でもない。ただ、そうした建物であるからこそ見るべき価値もあったりする。特殊ではない、普遍なものは、場合によっては凡庸な上スルーされてしまう。ただ、そうした凡庸なものは、確かにその時代を構成するものであって、記録される意味を持っていると、魚谷さんの話を聞いてあらためて気付かされた。

僕自身、魚谷さんの建築を実際に訪れたことはまだない。この展示を通して、これまで魚谷さん手掛けた建築と、これから計画されている建築で、現在と数十年後で、どのように京都という町に対しての立ち振舞い方を変えているか。また、周囲の京都の町がどのようにそれに応じているか。建築と町のお互いの呼応関係を見てみたいと思った。

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