清澄白河にある東京都現代美術館で開かれている「オラファー・エリアソン展 ときに川は橋となる」。コロナの影響もあって、会期が大きく変更になって9月27日まで開かれています。
オラファー・エリアソンは、アイスランド生まれのアーティストでサステナブルな世界に関心を向けている作家である。日本でも彼の作品はみることができ、金沢21世紀美術館に置かれているものは有名であると思う。こうしたインスタレーション作品の印象が強いかもしれないが、様々な自然現象や、見えない時間などに関する作品を多くのこしている。例えば、彼の生まれ故郷であるアイスランドの氷河を用いた作品は、比較的直接的に環境問題や文化的な問題を考えさせる。
また、彼らの活動は、芸術作品の制作活動にとどまらず、スタジオとして、実験やリサーチなどのプロジェクトも積極的に行っており、そうしたリサーチによる成果も本展覧会では展示されている。こういった展示は、建築の展覧会だと良くあるが、思考の過程を覗くことが出来るような展示は、インスタレーションの体験とはまた違って楽しめる。
オラファーの代表作とされる《ビューティー》は、自然現象の虹を装置を用いて再現したものであるが、見る人々によって違う見え方をしている。身長の高い人や小さい人、遠くから見る人、後ろに回り込む人、手でミストに触れる人など様々である。
また、この展覧会のタイトルにもなっている作品《ときに川は橋となる》は、水とその揺らぎを投影するという機構のインスタレーションで、水が想像しないような形をつくっている。水が自らの意思で形を変形しているようにも見えるし、自分がみているぼやぼやとしたものが、水であることを忘れてしまうような感覚を覚えることもあった。池の水を眺めて時間を忘れるような感覚とは大きく異なるのは、見ている対称が水であることすらも忘れてしまうことにあるだろう。映しているもの自体は、器に張られている水で同じなのだが、それらは投影され、頭よりも高い場所に12個に分けられ分散している。こうしたステップを踏むことで、水が水ではなくなっているように思えた。
同じものを見ていても、こうしたステップを施すことで全然違うものを見ているように感じ、違うことを感じるような作品はとても面白い。これは、人によっても感じ方が異なるだろうし、自分は違うものに思えたが、人によってはこれはただの水であると思うこともあるかもしれない。シンプルな機構によって、思考の分岐点を生み出す工夫は興味深い。
他にも建築にとどまらず、展示会のレポートのようなものを書いているので、ぜひ良ければお読みください。
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