アメリカ大都市の死と生

以前から読まないと、読まなきゃと思いつつも中々読み進めれずにいた、ジェイン・ジェイコブスの『アメリカ大都市の死と生』を一読することが出来た。

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本書は今年のはじめに映画化もされたが、1961年に出版され今のニューヨークに大きな影響を与えたといわれている作品。作中にもニューヨーク・マンハッタンの例が数多く出てくるので、実際にその土地を知ってるか知らないかで読みやすさが大きく変わるなと思った。(具体例でよく分からないところはざっと読み進めてしまったので、実際にニューヨークに行く機会があったら一緒に持っていきたい。)

文字数も多く情報量も多いが、大事な点がどこか分かりやすかった。本書は当時行われていた都市計画についてハワードの田園都市、コルビュジェの輝く都市を引き合いにだし理想の都市について話を進めて行く。

ここで1番の問題として挙げられていたのは「用途規制」により街区が単一の機能しか持たないことだと思う。このことは作中を通して最初から最後まで触れられている。

また、再開発についても述べられており、特に気になったのが「再開発した地域」と「近隣住区」との関わりである。これらの二つの地域の接続点にはスーパーブロックほどの駐車場や誰の所有でもない空地が作られているという。個人的に日本を見ると具体的にそのようになっている場所がすぐに思いつかなかったがそこは日米の違いなのかも知れない。

日本は再開発地域と近隣住区が対立している箇所は多くあり、その緩衝を考えることも自分の中での大きいテーマでもあるのでもうすこしあとで深く考えてみたい。

話は戻り都市の中での多様性の手法として歩道について多く語られている。歩道の幅、建物との関係、また街区の大きさと人がそれを曲がる回数、それらが要素として求められている。

ほかに、公園について都市計画を考えるうえで、安定性や吸引力を持つといったのは空想に過ぎず、自動的に何か目的を持つことはないと断言している。

街区は小さいユニットとして考えそれが集まることで、うまくいく近隣住区を作ると述べられている。ただ、それぞれが小さすぎると地区として無力で周りの別の地区に囲まれて孤立すると述べられている。ここでいう地区とは境界線で定められるものではなく地域のアクティビティや使い方そのものであると言っている。今聞けばそこまで新しいことを言ってるようには聞こえないが、これを50年以上前に言っているのだからとても先進的だと思う。

地区にしても、街区にしても大切であるのは多様性であり、また、それを生じさせることである。本書の中で、ジェイコブスはこの方法を4つ述べている。

1つ目に地区の多くの場所が一つの機能でなく、二つ以上の機能を果たすことが望ましい。

2つ目に大ていのブロックは短く、曲がる機会が頻繁である。

3つ目は年代の違う建物の混在。

4つ目は目的は何であれ、人が十分に密集している。

時間については年代の違う建物が同じ地区に存在することにもだが、人の密集も時間を分けて起こることが良いと述べられている。

これらの4条件を満たすものとして最も大きい大都市の中の下町がこれらを満たしているという。自分は東京でいう谷中あたりをイメージしたが、用途の混在が為されているかはなんともいえない。

建築内、都市内に多様性を持ちつつ周辺地区との関わり方などとても考えさせられた一冊でした。

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