ノーツの第一号、庭を読んだ。ノーツは、大村さん、斎藤さん、井上さんたちによる雑誌で、これから年1回のペースで発行されるらしい。
今回は、庭をテーマに取り上げ、4人によるインタビューと写真家による写真、庭に関するテキストの翻訳の6章構成で、それに脚注として解説が付け加えられている。見開きでA4の縦長の冊子には、左側に本文、右側に脚注が並行するように続いていく。
インタビュイーは、ジルクレマンの『動いている庭』の翻訳者でもある山内さん、都市生態学者の曽我さん、鳥取にアトリエをかまえる料理家の城田さん、音楽家であり人工知能の専門家でもある土井さんという多様さ。一見、庭という分野からは遠い人も居そうではあるが、庭との距離や角度の違いがこの本のキーになる気がした。
庭は定義づけが難しいもので、何を庭と感じ、庭と感じないかは人により大きく異なりそうである。例えば、人の手が入っている家の庭、自然とうまれた都市の中の庭、バルコニーの中のプランターなど、これらでは庭ができる過程も多岐にわたる。どういう部分に庭らしさを感じるか、庭とは何かが、インタビューなどから見えてくる気がする。
また、インタビューの後にはo+hや山田紗子さんの建築写真も撮っている高野ユリカさんの写真、デンマークの造園家であるソーレンセンの論考の翻訳が続く。高野さんの写真は、一見すると庭っぽくは見えないけれど、これまでのインタビューを読んだあとだと、十分に庭らしさを見出すことができる。ここまでくると、街の中でいろんな庭を探してみたくなってくる。
最後のソーレンセンの論考では、庭の定義から芸術としての庭が述べられている。
庭とは一体何でしょうか。おそらく在来植物をその領域の外よりもよく栽培できる場所、または、現地の植生とは別の環境を必要とする外来植物を耕作できる場所として定義できるでしょう。
ノーツ 第一号 庭 p106
また、脚注内で書かれていた、農耕以前にあった、木を選んで残したりあるいは伐採ていた習慣から、土地に介入していく「楽しみ」が、段階的に、見出された可能性は面白いと思った。
この本を読んで、去年くらいの映画の『ビッグリトルファーム』を見てみたいなと思った。荒れ果てた土地に一から生態系、農場を作っていくドキュメンタリーで、かなり現実的な話だった気がする。料理家の妻と、郊外に移り住み、そこで自然の厳しさに直面しつつも、農業を通して自然への理解を深めていく。
ノーツのインタビューの中では、人によってさまざまな大きさの庭が登場したが、生態系を考える中で庭の大きさは大切な要因であるように思える。映画で登場する200エーカーの広さは、日本では考えずらい広さである。それでも、広大な土地に生態系を構築していく様子は貴重な映像であるように思う。
ノーツの次回は、家をテーマにするみたいなので、楽しみにして待ちます。
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