今年度で退官される隈教授の最終講義シリーズの第2回。今回は社会学者の上野千鶴子さんと三浦展さんを招いてのレクチャーでした。
隈先生がまず初めに、建築学と社会学という別分野でありながらどういう接点を持っていたのか、両先生方の著書をもとに話され、各時代ごとにどういう考えを持っていたかを話されました。
この2つの終焉の本が同じ年に出されたのは驚きで、バブルの崩壊などの時代背景が大きく関わって、建築学や社会学の分野を超えた大きい転換点だったのかなと思いました。
上野先生のお話はまず、隈先生の作品についてで、建築学を専攻していない目線でかつ30代から親交があるという親しいからこそ言える厳しめの言葉もありつつ紹介されていました。建築家の作家性、3.11以後の建築、建築と社会学が大きいテーマであったかなと思います。上野先生が訪れた建築があとで隈先生のものだと知ることもあったらしく、そこを切り口に隈先生の建築の作家性のお話。3.11をきっかけにみんなの家プロジェクトを行っている伊東豊雄さんの活動を踏まえて、建築家がどう変わっているか。「負ける建築」という受動的な建築のありかたを震災より前に出していた隈先生は「変わることなく済んだ建築家」と上野先生は呼んでいてことも印象的でした。
建築学と社会学については、山本理顕さんと一緒に行ってきた活動をふまえ、空間帝国主義者と社会帝国主義者というワードを用い、建築学と社会学を提示していました。
上野先生のお話の後は、前回同様3者の先生同士での対談なのですが、隈先生がはじめに建築学と社会学の話について、世代によるものも大きいことについて触れ、山本理顕さんの時代は社会に対して大きく提案をすることが出来た時代で、それよりも遅く、2000年ごろから本格的に建築家としての活動を始めた隈先生の時代には、社会に対して提案することが難しいという話でした。世代による差は建築学の中でも日本だけでなく世界中にひとくくりにすることは確かにできないとは思うし、上野先生ともっと若い、地域に根付いている建築家との対談などがあったらす魅力的だなと思いました。
山本理顕さんの保田窪団地などダイアグラム主義の建築などのお話も社会学の目線から聞くことが出来たのはとても面白かったです。特に、質疑応答の時に隈先生は建築は距離で考え、社会学は距離は全然信用していないなどの違いが大きいのかなと思い、もっと共同し、距離だけでなく色んなパラメータで建築とその使われ方を見られたら面白いと思いました。
今回の講演会にいらした上野先生は東大入学式で世間一般的にも有名になられたけれど、本当に建築についても他分野でも勉強熱心だなと感銘を受けました。講演自体のお話も非常にお話がうまく、今まででこんなに話が分かりやすい人に会ったことがあったかなと思うくらいでした。この講演会のためにも隈さんの建築についても多く調べたり、講演会後も質問などをしに来た人の相手をしていたりしていて素晴らしい人だと思いました。
次回は隈先生の師匠である内田先生と深尾精一さんを招いて6月1日に行われます。
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