隈研吾教授最終連続講義 第一回「集落からはじまった」 @安田講堂

4月20日、安田講堂で隈先生の最終連続講義の第一回が行われました。初回は原広司先生と東大助教のセン・クアンを招いて「集落からはじまった」というテーマのもと講義が行われました。原先生は、隈先生の学生時代の師匠にあたり、原先生が隈先生ら学生を連れてアフリカに集落調査を行ったときの話から始まりました。

集落の調査は事前に許可をとってあるわけでもなく、集落内に車で入りお土産を子供たちに渡し、フランス語で「Je voudrais voir.」といい中を見せてもらい、家の中まで入り込み寸法を測る。こうした作業を一日の間に2回し、100以上の集落を調査してまわり、その経験から物怖じしない姿勢を学び、多数のプロジェクトをするなかで海外で信頼関係をどのように構築するかを学んだといいます。

さらには研究室時代のエピソードとして、原先生設計のニラム邸で施工会社が居なくなってしまい、隈さんをはじめ院生を動員して施工した話は、「工業化社会の後にくるもの」というテーマにつなげて、自分の手でつくることのできる素材、機構の話、隈研究室で行っているパビリオン建築を例に出していた。原研究室から隈研究室へと通じるものについて。

隈さんがこれまで行ってきたプロジェクトと用いた素材についてまとまっているJA109をスケール感、組み立て機構に着目してもう一度読んでみたいと思います。

講義の中でたびたび出てきた離散的、discrete、パラパラしたものというキーワードは原先生、隈先生で根本は同じでも行きつくさきは違う感じがしました。集落を構成する離散性とアフリカの住宅でみたものの離散性、小さいものが全体を構成する面白さという共通はありながらも、その後の興味の方向は違うように感じました。

原先生は敷地における一番遠い距離を探すことを大事にしていて、隈さんもプラン構成の中で一番遠い距離を意識していて、遠くの草原を見るようなプランを作りたいという言葉はとても面白かったです。隈さんの建築は、素材や素材の扱い方にどうしても目が行ってしまい、プランがどうなっているかに意識があまりいかない気がします。質問にもあったようにプランをシンプルに解くなかで、プラン内の距離はあまり意識してこなかったです。原先生が集落調査で集落のプランを書き上げ、集落の営みを図面に残す作業を近くで見ていたからこそ、そこに関する面白さが伝わったのかなと思いました。

とにかく、この講義を通して原先生のとても勉強熱心なところが伝わりました。2030年の世界の経済大国のランキングを紹介し、まだまだ知らない国がある、もっと知らないといけないと話されたときは、学ぶ意欲の高さに驚きました。研究室に色んな分野の人を呼んだエピソードをはじめ、まだ知らないことを知ることの大切さは原先生から隈先生に受け継がれていると感じました。

次回は5月25日に社会学者の上野千鶴子先生を招いての講演会で、この連続講義が分野問わずに学ぶ機会になるととても面白く、毎月の楽しみにしたいです。

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