インポッシブル・アーキテクチャー -もうひとつの建築史 @埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館で3/24まで開催されてる「インポッシブル・アーキテクチャー -もうひとつの建築史」に行ってきました。

20世紀以降の国内外のアンビルト建築に焦点を当てており、建築史を作ってきた「ビルト建築」とは対になるもうひとつの建築史の流れを追っています。建築史には、あまり触れられることがないながらも、確実に建築家の思考や当時の建築界の情勢は受けているだろうから、建築史に大きく影響は受けているだろう。

この展示会は写真撮影禁止ということで、入る前は内部がどんな様子か分からなかったので、とても気になってた展示会でした。実際に行ってみると多くの人が訪れ賑わっており、模型等も多くボリュームのある展示会でした。

北浦和という都心とは外れた場所でありながらも、これだけの多くの人を惹きつけるだけの価値のある展示会でした。

展示は20世紀以降という括りで、最初はロシア構成主義のタトリン、マレヴィッチ、日本の分離派、ドイツのブルーのタウトら表現主義の建築家らの作品が続きます。どれもアンビルト作品でありながらも、模型の展示も多くあり、実際に建つ一歩手前までは到達している印象でした。前川國男のコンペ案や黒川紀章の農村計画、磯崎新の都庁コンペ案など戦後の日本をリードした建築家の作品も多く並びます。

模型、図面以外にもCGによって再現したものがあったのも印象的でした。コルビュジェ展でも同じようなことを思ったのですが、アンビルト作品は実際に行くことはできず、CGで再現してもらえると細かい内部空間から何まで分かるので、とても勉強になります。CGなどで保存するという動きもあるため、リアルな建築がアンリアルな建築として保存されていく逆方向の動きも大切にしないといけないと思う。

また、この展示会では建築家ではない人の作品もあるのも印象的でした。岡本太郎や荒川修作+マドリン・ギンズ、会田誠など建築を専門にしていない人の理想とする都市像や建築像を見れるのはとても新鮮でした。特に荒川修作+マドリン・ギンズの橋は巨大な模型で一際目を惹くものでした。

そして、最後の最後に「実現できた作品」という脚注付きでザハの新国立競技場。模型もさながら、大量の実施設計書類は圧巻でした。設計者にとっては、ここまで設計作業を終わらせておきながら実現することが出来なかった無念が込められていました。設計という仕事は、途中でプロジェクトが止まってしまったり、設計者だけではどうにもならないことがあるのが常だとは思うけれど、ここまで完了した後はかなり堪えてしまうと思った。

本展示会は巡回展で、埼玉の後は新潟、広島、大阪と2020年3月まで日本中を周るらしいので近くに来るかたは是非行ってみてください。

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