リモート時代の働き方・暮らし方の話

新型コロナウィルスの影響で、今までにはないほど多くの人がリモートワークに移行している。この感染症が落ち着いた後に、これまでのワークスタイルに戻るのか、はたまた、リモートワークを多く取り入れる方向へと変化していくかは、まだどっちとも言えないが、これまでの働き方を考えるきっかけにはなっていると思う。

建築業界での職住一体

これまでも、建築のコンペや議論の中で職住一体の生活について話題には上がり、山本理顕さんの地域社会圏主義や北山恒さんのHYPERMIXなど論や実作を通じて模索がなされてきている。しかし、今回の出来事がこれまでと大きく違うのは、リモートワークや職住一体の生活について「まったく意識を向けていない人」に対しても半強制的に考えさせられる機会であったことである。

新しい働き方を模索している人は積極的に山本理顕さんが行ってきた活動について触れようとしたり、多拠点居住の活動に参加したりしてきたと思うが、多くの人が同時にリアルな場で経験をすることはこれまでなかった。

家で仕事をすること

家で仕事をするという行為は、一見何も問題は無いと考えるが、実際に行ってみると数多くの問題に付き合たる。家族がいれば、同じ住宅の内部で、働いている人と住んでいる人が共存したり、どこで働くべきかを考えることも、大きな問題として立ち現れる。また、他の仲間が働いている様子が感じられないのも大きな変化になると思う。普段から離れて作業することが多い身としては慣れたものであるが、急に孤独になることで意識を向ける先が定まらなくなってしまう気もする。

空気感の共有

ひとつ同じ空間を共有しながら、向いている方向が違う人がいることの難しさに気づくと思う。もちろん家族であれば、共有すべきところは多いのだが、仕事に向かっている時は、家族というコミュニティから外れ別の組織に属している。しかし、身体的なつながりは、空間を共有している家族の方がつよく、画面を越しての感覚の共有は難しい。

物質的な感触や臭い、マイクが拾わないような細かい雑音など、同じ空間にいないと共有できないことは非常に多いことに気づく。ミーティングにしてもやはり話の間などは取るのが難しい。こうした部分は、同じ空間を共有するリアルなオフィスにはかなわないと思い知る。離れていながらも同じ空気感を作りだすことを今、試行錯誤してみることは、きっと来るであろうリモート時代の働き方を豊かにすると思う。

こないだのゼミの中で先生からあった話で、同じ食べ物や飲み物を食するとどうなるだろうかという話題があった。視覚や聴覚の情報しか共有できていない状態と比べて、同じものを食べる行為が加わり味覚も共有すると、共有するする空気感も一段階リアルに近いものになると考える。小さい工夫であっても、今の時期に試行錯誤してみることは大きな価値を生む可能性があると思う。

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